ひまわり保育園プロポ / 2020

ひまわり保育園プロポ / 2020

津南町立ひまわり保育園プロポーザル

津南町立ひまわり保育園の基本設計図及び鳥瞰パースが津南町のウェブサイトに公開され、

町内パブリックコメントの結果より指名型プロポーザルが開催された。

基本設計後にプロポーザルは異例であり、提出期間は2週間という超短期であった。

私は十日町市の佐藤建築設計事務所様と新潟の塚野建築設計事務所様とチームを組んでプロポーザルに挑戦した。

私たちは現役の子育て世代であり、それぞれ小さな設計事務所であるが、

「心の底からひまわり保育園をより良い園舎にしたい」

という強い想いがあった。

チームで厳しく楽しく意見を交わし合い、保育園の設計を進めた。

 

 

提案内容は下記の技術提案書の通り

 

ひまわり保育園02

 

 

ひまわり保育園03

 

 

 

ひまわり保育園04

 

メインエントランス:

深い軒下へ車が横づけ可能であり、雨に濡れずに送迎できる。

長いベンチでママ同士がお話しできるスペース。

玄関内部で3段の緩い段差があり、子どもたちは借りる絵本を座って読んだり、寝ころんだりしてママの迎えを楽しく待っている。

フローリングからでも土間からでも、両方から使える手洗い場を配置している。

 

 

 

ひまわり保育園05

 

0歳児1歳児保育室を外から見る:

大きな軒下があり、強い直射日光を遮蔽し、雪から建物を守る。

前方には緩い斜面の芝生広場があり、少しハイハイができる赤ちゃんは遊びながら育つ。

屋根にはどこでもタープを設置することが可能なので、広く日陰をつくることができる。

 

 

 

ひまわり保育園06

 

水のテラスとあまみず池を見る:

子どもは水遊びが大好き。五感を最大限に感じられる遊べる空間を設計する。

子どもたちは作られた遊具では長く遊べない。毎日変化のある自然と建築を曖昧に設計していくことで、

没頭して遊び込める居場所を計画する。

 

 

 

ひまわり保育園09

 

4歳児5歳児保育室を外から見る:

自然の森を出来る限り残し、森に生息するような、共存するような保育施設を目指す。

自然からの学びは果てしなく、人を大きく育ててくれる。

昔のひまわり保育園は平屋であり、もっともっと森と共存していた。

設計要綱より建物割合が大きくなるが、少しでもこの森を残したい。

 

 

 

 

設計ポイントと審査員質疑回答

#大きな軒を出した単純明快な鉄骨造の平屋建て。(耐雪3m、最大庇出3m)

職員さんや地域のおじいちゃんおばあちゃんが、遠くにいる子どもたちの様子が見えるようにガラス張で計画。津南町全体で子どもたちを見守る思想。

#グランドラインから室内床高さをあげて斜面をつくり、大地のアップダウンで子どもたちが走ったり寝転んだりできるランドスケープと一体型の建築。

#自然の光や風、大地そのものが建物に入り込むよう、適度な距離感を保った分棟的配置計画。(感染症対策にも有効)

#部屋の間仕切は、大人の目線を遮らない高さでありつつ、子どもたちの集中力を妨げない高さで計画。

#様々な遊びの仕掛けがある長めの廊下空間。0歳児1歳児はお兄ちゃんお姉ちゃんの姿を日ごろから目にするように平面で計画。

前室や遮音扉でお昼寝時には配慮する対策。また津南小学校の廊下は2倍以上あるので練習になる。

#子どもたちとコックさんとの交流を必然的に誘発させるまるみえキッチンと軒下のロングベンチスペース。

#軒下井戸消雪パイプと雪庇落としの管理がしやすい平屋の除雪計画。耐雪3m。子どもたちに除雪作業を見せる豪雪思想。

#将来、保育室を公民館や会議室、ワークショップ、図書館、お店、子育て支援、様々な用途変更が可能な計画。外部から直接アクセスできる。

#子育て世代の声や職員さんの声をきちんと受け入れるスケジュール体制。

#遊戯室は既存建物2階を拡張させて配置し、予算10億円のうち1億円削減。

#「森は使われていない、管理されていない」という発言は実際には違う。現場へ行けばわかること。いつでも子どもたち森の中で楽しそうに遊んでいる。この森こそ大切にしなければいけない。

 

 

 

提案は不採用であった。

しかしこのメンバーで挑戦したことに意味があり、さらに強い建築思想を心に刻んだ。そして敗因理由を徹底的に追求し、これからの建築へ挑戦する。

 

 

 

 

 

豪雪地に建物をつくるということ

津南町内ではこの約30年間、高基礎住宅を多く建設してきた。

人の手をかけず、高額な費用をかけて除雪管理の合理性を図ってきた。

高度成長期時代を生きた今の50代以上の方々は、無意識的に便利で楽ができる商品や建物を求めてきた。

また近年では設計や施工の技術革新の成果により耐雪3.0m、3.5m、4mと過剰に建物を強化する傾向がある。

しかし同時に多くのデメリットが発生していることに気づかない。

今回の提案では、その便利で楽ができる建物よりも大切な「豪雪思想」を示した。

「大人たちの屋根の雪下ろしの姿を子どもたちに見せること」の重要性である。

豪雪地域の風習を子供たちに記憶させる。

いつか大人になったときに、抵抗なく自然とその作業ができるように。

昔は当たり前のようにしていたことである。

冬場に津南町では除雪隊を揃えて町全体の除雪を行っている。

豪雪のために建物に高額な費用を注ぎ込むのではなく、多くの町民に雪下ろしの仕事を与え、町全体で保育施設を守ることこそ、この豪雪地域の新しい思想であり、津南らしさであると考えている。

子どもたちが「いつも雪下ろしありがとう」と除雪作業員のおじさんに声をかける姿が思い浮かぶ。

豪雪地域の設計は難しい。

豪雪の向き合い方には世代によって価値観が異なる。

また一人ひとり育った家の環境で違う。

しかしながら建物を管理する方と思想を共有することで可能性は無限に広がる。

人は建物に守られ、建物を守る。

私はこの豪雪地域に生まれ育ち、この地で「ものづくり」をすることに誇りを持ち、これからも丁寧に向き合いたいと思う。

大平政志建築設計事務所 大平政志